ARTA MECHANICS OWNER'S VOICE Vol.2 「ヴィゲイル」オーナー

ARTA MECHANICS OWNER'S VOICE Vol.2 「ヴィゲイル」オーナー


オーナー 勝又さんに訊く
〜街乗りからサーキットへ〜

 

ARTA MECHANICSのカスタムカー第2弾として、東京オートサロン2023でベールを脱いだVIGALE。
ベース車であるトヨタ GR86としながら、国産車や一般的なカスタムカーとは一線を画した1台として、多くの注目を集めました。
その姿ばかりが注目されがちなVIGALEですが、実際の乗り味や走行性能がどうなのか気になるところです。
そこで今回は、筑波サーキットコース2000(以下TC2000)で行われた走行会にお邪魔し、VIGALEオーナーにインタビューを実施し、生の声をお届けします。

■TC2000に120台が集結するイベントでVIGALEが放つ存在感

 

数日前まで季節外れの暖かさが続き、急に訪れた冬の澄んだ空気の中、TC2000で開催された「UNPARALLELLED TRACKDAY」。
参加台数は120台を超える大規模走行会には、完全ノーマルの輸入車からレーシングカーまで、実にバラエティに富んだ車種が参加しています。
中でも参加台数が多かったのは、先代のトヨタ 86(ZN6型)とGR86(ZN8型)です。

 

エアロはもちろん、ホイールやマフラーに至るまでノーマル状態の車両もいれば、GR86/BRZカップのワンメイク車両が参加しているなか、白いVIGALEは確かな存在感を示していました。
今回お話を伺ったオーナーの勝又さんは、現在はご自身で会社を経営されていますが、若い頃からスポーツカーを乗り継いできた生粋の車好き。
そんな、勝又さんがどのようにVIGALEと出会い、そしてサーキットに持ち込み楽しんでいるのかについてお話を伺いました。

 

■購入動機は“見た目”でも本気の走りを求めてチューニング

 

「随分前からAPIT(オ-トバックス東雲)は何かと利用させてもらっていて、その時も買取査定の相談でお店を訪れていました。ちょうどそのときに赤いVIGALEのデモカーがあったんです。説明をしてもらったのもあるんですが、購入理由はやっぱり見た目ですね。笑」

これまで様々なスポーツカーに乗ってきたという勝又さん。
実はその買取の相談を行っていたのはポルシェ 911GT3というではありませんか。
筆者を始め多くの車好きから最高のスポーツカーと言われるポルシェ911。
しかも最高グレードと言っても良いGT3を売って、VIGALEを購入したという経緯に正直おどろきました。

 

 

「GT3は確かにいい車ですし、速かったです。ただ、普通に公道を走るだけなら、GT3は速すぎたというのもあります。以前86(ZN6)に乗っていたこともあるので、パワーがちょうどいいと感じています。もちろん乗ってみたらノーマルエンジンでは物足りないのでチューニングしていますが。笑」
車仲間とのツーリングやサーキット走行が趣味という勝又さん。
ZN6型の2.0Lから2.4Lに拡大されたGR86は、通常の使用環境ではほとんどパワー不足を感じることはありません。
しかし、車で走ることの楽しさを知るからこそ、さらなるパワーを求めてしまうのもまた走り好きの性。
そんな勝又さんのVIGALEには、HKS社製のスーパーチャージャーが装着され、300馬力程度にパワーアップされているとのことでした。
また、サスペンションもよりハードなキットに交換され、街中重視から本気でサーキットを走れる仕様に変更されています。

 

■根っからの車好きが辿った名車たち

 

ノーマルのGR86では満足できないほど、走ることが好きな勝又さん。
VIGALEと出会うまでどんな車に乗ってきたのか、その愛車遍歴を伺ってみました。

「若い頃から車が好きで、収入の殆どを車に注ぎ込んで来ましたね。カローラ系はTE27レビン、TE47トレノ、TE55レビン。弟とダートトライアルやっていたんで、TE65、71にも乗りました。もちろんAE86トレノにも乗っていましたし、SW11型のMR2にも乗っていました。」

正直、一般の方にとってはちんぷんかんぷんかもしれませんが、車好きの友人が多い筆者でも、ここまで網羅してきた方にお会いしてきたことはありません。

多くのお父さんたちがそうであるように、一度はファミリーカーにのみ乗っていた時期もあるようですが、近年では再びスポーツカーを乗り継いでおられます。

「GRヤリス、86、TRD 14R-60(86のコンプリートカー)、ロータスエミーラ、911GT3にも乗ってきました。」

イチ車好きとして、なんとも憧れてしまうラインナップですが、様々なスポーツカーに乗ってきた中でもっとも良かった1台をあえて挙げてもらったところ「14R-60ですね。すごくパワーがあるわけではないんですが、とにかく車としてのバランスが素晴らしかったです。」とのこと。

トヨタのメーカー直系チューニングメーカーであるTRDが仕立て、限定100台の14R-60は、ある意味究極のZN6型86と言っても良いかもしれません。
残念ながら筆者はそのハンドルを握ったことはありませんが、エンジンは自然吸気のままであるにもかかわらず徹底したボディとサスチューンによって、ノーマルとは全く次元の異なる車に仕上げられています。

誰もが振り返る個性的な出で立ちと、GR86の素性を殺さない大人のスポーツカー。それをコンセプトに開発されたVIGALEのコンセプトに、合い通じると感じ得るポイントです。

 

■慎重なスタートから着実にタイムアップ!VIGALE初走行

 

「まともにサーキットを走るのは1年ぶりくらいなんですよ。今回この車(VIGALE)で走るのも初めてなのでゆっくり行きます。」
そんな遠慮がちに語っていた勝又さん。
確かに最初の走行セッションを見ているとスキール音を全くさせず走っていました。

 

 

「車の状態もわからないのと、やっぱり久しぶりなのでちょっと怖い(笑)。無理はせずとりあえず走ってきたという感じですね。」

TC2000で開催された「UNPARALLELLED TRACKDAY」では、ラップタイムごとに6つのグループに分けられ、1グループ15分の走行枠が割り当てられています。
グループ分けの基準となるラップタイムは自己申告制で、過去にZN6で1分4秒台というタイムで走っていた勝又さんですが、今回はもっとも遅いグループにエントリー。
「無理はできないし、みんなの迷惑になるから。」と謙虚に話します。

 

 

サーキットというと、ついタイムばかり求めて無理をしてしまい、最悪の場合クラッシュ……なんてことにもなりかねませんが、あえて1歩引くことができるのはサーキット上級者の証です。
最初の走行セッションでは1分12秒台だったタイムは、最終的に1分8秒台にまでタイムアップ。
様子を見ながら徐々にブレーキングポイントを詰めていく走りが印象的でした。

 

■プロも唸る車の仕上がり具合

 

午後になるとプロドライバーによる同乗走行が行われ、明らかにペースアップ。「僕的にはもうちょっとセッティング詰めようと思ったんだけどこのままで十分よく出来てると言われちゃいました(笑)。」と勝又さん。
タイム的に速いにもかかわらず、安定したスムーズなプロの走りに驚かれたようです。

その後も午後のセッションを走行し、トータルのラップ数は25ラップ。
1周約2キロのTC2000であることを考えると、約50km全開走行をしていたことになります。
サーキット走行をしたことがある方ならわかると思いますが、街中では感じることのないGを感じながらこれだけの周回数を走ると、相応に体力を消耗します。
当然「疲れた。」とおっしゃっていたものの、終始明るい笑顔が印象的でした。

 

■使うシチュエーションに併せてさらなるカスタマイズ

 

これだけ走っても車にトラブルが出ないのは、VIGALEにサーキットを走行する上で必要な対策をしっかり施していたのは言うまでもありません。納車後、ATFクーラーとエンジンオイルクーラー装着。抜かりのない熱対策に加え、実際に乗ってみて気になった点として、ブレーキシステムを交換しつつボンネットピンが追加されています。

 

 

本来VIGALEのコンセプトは、街で格好良く乗れる大人のスポーツカー。
スポーツカーとして高いレベルで仕上がっているGR86とはいえ、故障のリスクを回避しながらサーキットを楽しむためには、ある程度の対策は欠かせません。

もちろんそれ相応の費用はかかっていますが、闇雲なカスタムはしない。
ツボを抑えて手を入れているあたり、如何に勝又さんがサーキット走行を熟知されているかが分かります。

 

■街乗り重視からサーキット重視へ

Person wearing sunglasses and gloves driving a car.

 

ちなみに、今後どのようにVIGALEと付き合っていくのか尋ねたところ

「久しぶりとは言え、やっぱりサーキットを走るともっとタイムを上げたくなりますね。プロドライバーの方にも言われちゃったんですが、シートを純正のままにしてしまったので、もっとホールド性の高いシートに換えたいと思います。あとは攻め込むとトラクション不足を感じる場面が多々あったので、LSDも入れたいですね。」

実は勝又さんのVIGALEのシートは純正のままで、オプションとなっているARTA MECHANICSオリジナルシート(BRIDE社共同開発)を選択しなかったそう。
その理由は「同乗者の乗り心地優先。」とおっしゃっていました。
ベース車がMTではなくATであることからも分かる通り、最初からサーキット走行のために購入したわけではなく、あくまで快適にかつおしゃれに乗れるスポーツカーとしてVIGALEを選ばれたのでしょう。

 

 

ただ、愛車遍歴を考えれば言うまでもなく、勝又さんは根っからのスポーツカー好きであり走り好き。
大人がおしゃれかつ快適に乗るスポーツカーであるVIGALEは、勝又さんの手により、大人が本気で走りを楽しむスポーツカーに進化しています。

今後勝又さんのVIGALEがどう進化していくのか。そして、タイムアップはもちろん勝又さんのスポーツカーライフがどう発展していくのか。チャンスがあれば、またお話を伺って見たいと思います。

 

 

 

Arta mechanics