「地産地消で五感を満たす」
車でキャンプに向かう際、通りかかる道の駅やスーパーで「地産地消」というワードを目にする機会が増えた。地産地消とは、その土地で生産された食材をその地域ならではの方法で消費することで、作り手と買い手の距離を縮めようとする取り組みのことである。生産者はその土地で育てた食材を新鮮な状態で買い手に届けることができ、自らが住む地域をより好きになってもらえる機会を作ることができる。一方で消費する側は、安全安心な食べ物が手に入り、土地ならではの味わい方を体験できるというわけだ。
今回はロードトリップだからこそ体験できる地産地消について考えていきたい。
旅先で出会う地の食材
行きたい場所へ自由気ままに向かえるロードトリップは、旅先でさまざまな食と出会い、リアルな地産地消を体験できるのも魅力の一つである。
ネットで全国各地の食材が手に入るこの時代に、わざわざ現地へ向かうメリットが果たしてあるのか、疑問に感じる人もいるだろう。
「お取り寄せ」と大きく違うのは、食にたどり着くまでのプロセスだ。特に車での旅は、食に行き着くまでの時間や労力が期待感を助長させる。
さらに道中で見られる景色や空気は、より一層食材の美味しさやありがたみを感じさせてくれる。
生産者の想いを受け取る
地産地消を体験するうえで、一番メジャーとなるスポットは地域の農産物直売所だ。そこで販売されている農産物たちは、新鮮かつその土地の特性を活かした食材であり、地元の農家や酪農家たちによって育てられた地元っ子というわけだ。
各地域の直売所では、ただ地元の野菜を販売しているというわけではない。例えば生産者自らが試食会を行い、消費者との交流の場を持ったり、スーパーとの差別化を図るためにあえてカットしていない野菜を販売し、同時に使い切るためのメニューやレシピも提案している。そこには直売所と生産者が密になって、地域の人々や訪れた観光客にこの場所を好きになってもらいたいという取り組みが感じられる。
品質だけでなく、その地域ならではの文化や生産者の食材に対する想いを受け取ることができるのが、地産地消のメリットである。
食を体験する
地元の採れたて野菜をキャンプで味わうなど、リアルな地産地消を体験できる農園付きのキャンプ場もおすすめだ。
収穫から体験することができ、そのままキャンプでその食材を使った料理を堪能することができる。
その地域の自然の中で過ごし、すぐ側で採った食材を食べるという贅沢な遊びが楽しめる。さらに収穫体験だけでなく、食材の育て方や土の知識なども聞くことができたり、地元ならではのレアな食材も楽しめる。
自ら収穫した野菜への想いを感じながら、星空の下で過ごせる農園キャンプはこれ以上ない贅沢な食事ではないだろうか。
五感以上で感じ取れる幸せ
食べる環境や事柄が味覚以上の幸福感を与えてくれることがある。
例えば、キャンプでは「外でご飯を食べるといつもより美味しい」と感じたり、真冬の寒さの中で温かいスープを飲んだら、何倍ものありがたみを味わった経験はないだろうか。それと同じように、人間の肌で感じ取る「美味しさ」を引き立たせてくれるのが地産地消だ。風景や文化、生産者の想いを知ることで「ここでしか味わえない」「ここに来てよかった」と感じることは、五感だけでは得られない美味しさの一つなのかもしれない。
行動から生まれる食との出会い
地産地消は決してハードルは高くない。しかし、重要なのはその土地を実際に訪れるということだ。車での旅は、ルートは自分次第。
寄りたいところへ行けるのがメリットでもある。土地ならではの食材を味わうことで得られる幸福感は、配送されたものを食べるのとは何かが違う。
その違いは、実際に体験して初めてわかることかもしれない。確かめるなら、週末を使って旅の計画を練ってみてはいかがだろう。
文 : 山田 昭一