ブランドテーマの本質に迫る“クルマ×ファッション”をテーマに鈴木亜久里氏とのトークセッション
2023.2.7
“クルマとファッション”というARTAのかかげる大きなテーマ。東京オートサロン2023では、2日間に渡ってARTA総監督 鈴木亜久里氏とファッション関係者が興味深い話を聞かせてくれた。“クルマ×ファッション”というテーマで、1月14日(土)にB.R.ONLINE 戸賀敬城氏、1月15日(日)にLEON副編集長 近藤高史氏を迎えておこなわれたトークセッションの模様をお伝えする。
クルマ自体がファッション
「スポーツカーに限定すると、クルマ"と"ファッションじゃなくて、クルマ"は"ファッションだと思う。」1月14日に行われた戸賀氏とのセッション冒頭で鈴木亜久里氏が口にした。「クルマ × ファッション」というテーマに対して、さらに踏み込んだこのひと言は、ARTAブランドの目指す本質を表現している。
スポーツカーはただの道具ではない
「(クルマは)道具のようで、道具じゃないと思います。自分を飾ったり楽しんだりするものですから」と戸賀氏はいう。
「トンカチやノコギリって楽しむものじゃないですよね。ファッションとして楽しめるクルマは単純な道具ではないと思います。」と続け、「クルマはファッション」と言い切る鈴木氏の言葉を後押しした。
ガラスに映る自分とクルマ
「ショールームのガラスに映る自分の姿を見てクルマはファッションだと思った」と鈴木氏は独特の表現で語る。「このクルマに乗っている俺がどう見えるのかな?っていうのは、クルマを買うときの大きなポイント。」洋服を着た自分を鏡に写して確認する感覚なのだろうか。
「確かに、鏡みたいになっているタンク車の後ろについたとき嬉しくなりますね。」と戸賀氏も共感した。
かっこいいファッションは自己満足
"クルマ × ファッション"という答えの難しいテーマに対して、鈴木氏は「ファンションは自己満足なんだよね」と答える。
自分が気に入っているかどうかが大切
「人はそんなに見てるわけじゃないんだけど、ファッションって自己満足なんだよね」と鈴木氏は言い切る。自分流でファッションを楽しんでいることが伝わってくるひと言だ。
しかし、一方で「クルマに合ったスタイルには執着はしたいよね」とクルマとファッションへのこだわりも口にする。
「ファッションは大変なのよ。本当に楽しむためには努力も必要。」と苦笑気味に話す鈴木氏。"ファッションは自己満足"と矛盾する発言に思えたが、「努力のうえに、"人と違う" "人より新しい"と思える本当の自己満足がある。」と"クルマ × ファッション"の核心に迫る言葉を続けた。
スポーツカーも洋服も衝動買い
「僕はクルマを買うときも、理屈ではなくぱっと見てかっこいいものを購入する。衝動買いだよ。洋服もそうじゃない?」とクルマでさえも洋服のようにインスピレーションで購入することを鈴木氏は語ってくれた。
一般の感覚からは一見ずれているが、発言の本質は"理屈ではなく本当に自分が気に入ったもの"を選ぶことが重要ということだろう。
鈴木氏は続けて「実際に乗ってみると、"違うな"という失敗もたくさんしている。」とし、そういう点でもファッションと共通点があることを口にした。「お店では気に入って洋服を買っても、着心地が悪いなっていうのもありますよね。」と戸賀氏も大きくうなずく。
余裕のある大人に似合うスポーツカー
「レーシングカーは一切の無駄がないよね。無駄のない美しさ。でも、楽しむためのクルマは余裕が大切。余裕からくるエレガントさがおしゃれだよね」と鈴木氏は、スポーツカー、カスタムカーの魅力を語る。
「VIGALEは港区仕様の86かなと思いました。」と戸賀氏はARTA MECHANICSのカスタムカーを表現。「普通の86よりも5歳、10歳上の余裕のある方に似合うなと。」続けた。
レーシングチームからレーシングスポーツブランドへ生まれ変ったARTA。2022年にNSXをベースとしたLEGAVELO、そして、2023年にGR86をベースにしたVIGALEを発表した。戸賀氏の言葉は、「クルマとファッション」というテーマに対し、ARTAなりの方向性を見出すことができたという証だろう。
心に余裕を持つ大人が着こなすファッションとスポーツカー
「ファッションって値段が高ければいいというわけではなく、(本質的には)心の余裕だよね」と鈴木氏は言い切る。スポーツラグジュアリーを掲げるARTAのコンセプトと重ねつつ、カスタムカーやファッションの本質を語ってくれた。
レースはファッションでありパッション
1月15日のトークショーでは、レーシングチームであるARTAがファッションという分野に打って出たことにも繋がる興味深い内容が語られた。
ファッション誌LEONの副編集長近藤氏は、「そもそもレースは本来ラグジュアリーな文化の原点なんですよね。ヨーロッパの貴族が馬車で競い合ったところが起源なので。そういう意味では、レースも含めてクルマはファッションでありパッションなのかなと思います。」と、LEONレーシングとしてスーパーGTに参戦する意義を語る。
「クルマも人間もドレスアップを楽しむって点では同じ。クルマから降りるときには、相応の素敵な格好をしていたいですよね」と近藤氏は続けた。「かっこいいクルマから、さらに素敵な人が降りてくると、倍以上にクルマもその人もかっこ良く見えると思うんです。」とクルマとファッションが切り離せないという、自身の考えを話してくれた。
クルマもファッションも大切な自己表現
"クルマ × ファッション"というARTAの中核をなすテーマ。一方で、抽象的なテーマだけにどういう展開のトークになるかまったく予想がつかなかった。しかし、冒頭の「クルマがファッション」という鈴木氏のひと言をきっかけに、"ファッション"という切り口での"クルマ"と"洋服"の多くの共通点が語られることになる。
クルマとファッションはどちらも自己表現をできるアイテム。自分なりのこだわりポイントをもって、理屈ではなく"かっこいい"と思えることがもっとも大切だ。